サックスの種類
サックスで最もよく使われるのが、「ソプラノ」、「アルト」、「テナー」、「バリトン」の4種類。 クラシカルサクソフォーンではアルトを標準的な楽器として用いているが、 ジャズやポピュラーミュージックでは、アルトとテナーの存在は同位置に定義されると考えて問題ない。
ソプラニッシモ(ピッコロ)(Sopranissimo(piccolo) saxophone)
調性は変ロ(B♭)調で、演奏の機会は滅多にないといってよく、また演奏には強靭なアンブシュアーが必要になる
ソプリロ(Soprillo)
エッペルスハイム社ではソプリロ(Soprillo)と称し、その極限的といってもいいポジションから熟練の演奏者にのみ相応しい楽器とされている
ソプラニーノ(sopranino saxophone)
調性は変ホ(E♭)調。実音は記譜より短3度高く、演奏される機会は少ないものの、
サクソフォーンのアンサンブルなどで使用される場合がある。
また、持ち替え用の楽器としてジャズ演奏者が使用するケースもある。
ソプラノ(soprano saxophone)
調性は変ロ(B♭)調で、アルトよりも完全5度高い。実音は記譜より長2度低く、
ソプラノ、アルト、テナー、バリトンの4本のサックスによって演奏されるサクソフォーン四重奏ではリーダー的な存在となる。
また、調性がテナーと同じであるため、ジャズなどではテナー奏者がソプラノに持ち替えて演奏するケースが多い。
もともと、ネックからベルにかけて円錐状の直管(ストレート)だったのだが、 柳澤管楽器から、 ネック部分を少し曲げた「カーブドネック」の楽器が発売されてから、 その音色の柔らかさもあって、現在ではカーブドネックも一般的なものとして知れ渡ってきた。
また、1本の楽器で両方の特性を補うために、アルト以下のサックスと同じく、ネック部分を分割する方法を採用した、 カーブドとストレートのネックを付け替え可能式にした「デタッチャブルネック」というものもある。
アルトサクソフォーン同様に、全体が曲管である「カーブドソプラノ」と称する楽器や、 ベル部のみが正面を向いた「サクセロ」と称する楽器も存在する。
また、ハイF#キーを備えるものには半音上のハイGキー(実音ファ(F))を出せるものもある。 以前は明るい音色が特徴のC調管もあったが、現在は生産されていない
オーロクローム(aulochrome)(en:Aulochrome)
特殊奏法の重音ではなく、通常の音色で2つの音を同時に出せる「二重ソプラノ・サクソフォーン」。
この楽器のために、フィリップ・ボスマンは「ファンファーレIII」という協奏曲を書き下ろし、
2002年にパリでおこなわれた「ラジオ・フランス」での演奏会、
翌年の2002年にベルギーのブリュッセルでおこなわれた「アルス・ムジカ現代音楽祭」で披露された。
アルト(alto saxophone)
調性は変ホ(E♭)調。記譜より実音は長6度低く、標準となる音域は、ヘ音記号のレ♭(D♭)から2オクターヴ半ほど上のラ♭(A♭)までとなるが、
ハイF#キーを備えているものは、さらに半音上のラ(A)までの演奏が可能となる。
また、管を伸ばしド(C)まで演奏できるようにしたタイプも昔の個体の中には僅かではあるが存在する。 ソプラノと比べるとネックの曲がりが大きく、途中で本体が折り返す構造となっている。
また一般的ではないが、ネック部以外がほぼ直管という「ストレートアルト」というタイプも稀に存在する。
サクソフォーンといえば、このアルトタイプの構造をイメージされるほどに、サクソフォーンの中でも一番スタンダードな楽器といえる。 クラシカルサクソフォーンのための協奏曲や独奏曲は、そのほとんどがアルトサクソフォーン専用に書かれている。
また、ビッグバンドにおけるサクソフォーンセクションでは、セクションリーダーを務め、主旋律を奏でるのが、 アルトのスタンダードなポジションである。
テナー(tenor saxophone)
アルトよりも調性は完全4度低い変ロ(B♭)調で、記譜よりも実音は1オクターヴと長2度低くなる。
標準となる音域は、ヘ音記号のラ♭(A♭)から2オクターヴ半ほど上のミ♭(E♭)までで、ハイF#キーを備えているテナーは、
その半音上のミ(E)までが演奏可能となる。
アルトと比べてテナーは、ネックや本体が長く、管の曲がりも大きいが、構造の基本的な部分はアルトと類似している。 アルトでも紹介した「ストレートテナー」のタイプも存在するが、アルト同様に一般的ではない。テナーは演奏者も多く、 アルトの次によく使用される楽器とされていて、その豪快な音色から、ジャズやポピュラーミュージックでは、 ソロ楽器としても幅広い分野で使用されている。
C メロディ(C melody saxophone)
2つのファミリーのサクソフォーンを当初考案したアドルフ・サックス。
現在使われているE♭管-B♭管ファミリーの楽器およびF管-C管ファミリーが該当する。
F管-C管の楽器は製作もほとんどされなかった(20世紀前半に製造はされていた)が、「メロディサックス」という愛称でC管テナーが存在した。
調性はハ(C)調で、記譜より実音は1オクターヴ低い。B♭管テナーとは全音違いとなる。 また、C管でピアノ、ギター、フルート、オーボエやオルガンの実音譜を移調することなく、 既存する数多くの楽譜をそのまま演奏できたため、教会音楽やアマチュアには好評であった。 製造は現在されていないものの、レストアされたビンテージ楽器が流通するなど、根強い愛好家が現在も多く存在している。
バリトンサクソフォーンバリトン(bari(y)tone saxophone)
調性は変ホ(E♭)調。記譜より実音は1オクターヴと長6度低く、アルトと比べて1オクターヴ低い。
他のサクソフォーンには存在しない、ローAキーを備えているのが一般的で、実音のド(C)の音(記譜上のA)を奏でることができるが、
昔の個体にはこの機構がないものも存在する。
また、軽快な音色を出すために、この機構を省く固体もある。 ネック近くの本体に折り返しがあるなど、アルトやテナーと比べると構造上に違いが見られる。 楽器本体が座位で演奏した際に大きく床に近づいてしまうため、一脚がベルの折り返し部分に組み込まれているタイプもある。
吹奏楽ではサクソフォーンや木管セクションのバス声部のパートを、ビッグバンドでも低声部をパートする。 トップアルトサックスとオクターブ違いの主旋律、また、アドリブソロを稀にではあるが吹くこともある。 アンサンブル楽器としての性格がクラシカルサクソフォーンでは強いものの、栃尾克樹をはじめとして、 ソロ楽器としてバリトンを演奏するプレイヤーも最近出てきている。
また、ジェリー・マリガンに代表されるようなバリトンサクソフォーンのソロ奏者がジャズにおいては存在する。 管楽器で「バリトン」と呼ばれるバリトンホルンと区別するために「バリサックス」(Bari Sax)(日本では「バリサク」)と表現されることもある。
バス(bass saxophone)
調性はテナーよりも1オクターヴ低い変ロ(B♭)調で、記譜より実音は2オクターヴと長2度低い。
バリトンに類似している構造を持つ。サクソフォーンのアンサンブルや大編成の吹奏楽などで使用されることがある。
コントラバス(contrabass saxophone)
調性はバリトンよりも1オクターヴ低い変ホ(E♭)調で、日本には3台しか無く、世界的にみても数台しか存在しない。
身長のある成人男性以外は使用する場合には、演奏の際に脚立が必要となる。
稀にサクソフォーンのアンサンブルなどで使用されることがある。
チューバックス(tubax)
大型なコントラバスは携帯や帯同には不便な為、管長を折り曲げて作ったのがこのチューバックス。
エッペルスハイム社が製作。コントラバスと同音域で、バリトンと同じマウスピースを使用することができる。
サブコントラバス(Subcontrabass saxophone)
調性はバスより1オクターヴ低い変ロ調で。「B♭管コントラバスサクソフォン」とエッペルスハイム社は称している。